飲食店はやめとけといわれる理由は?就職・転職・辞めどきを解説



「飲食店はやめたほうがいい」といわれると、戸惑いを覚える方もいるかもしれません。確かに飲食業界は労働環境の厳しさから、否定的な見方をされることがあります。それでも、調理や接客・店舗運営など、ほかの業界にはない学びや発見があることも事実です。
本記事では、就職・転職・辞めどきなど幅広い視点から、飲食店の実態と選択肢を解説します。ぜひ今後のキャリアを考えるきっかけにしてください。
目次
飲食店はやめとけといわれる理由
「飲食業界はやめとけ」と、いわれることが少なくありません。その背景には、他業種と比較して厳しい労働環境や待遇面での課題が存在します。とくに以下3つの問題点は、飲食業界が敬遠されるおもな理由となっています。
● 労働時間が長い
● 有給休暇の取得率が低い
● 離職率が高い・人手不足が深刻
それぞれ見ていきましょう。
労働時間が長い
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、「宿泊業、飲食サービス業」の週所定労働時間は1企業平均39時間35分と全産業中でもっとも長く、全産業平均の39時間20分よりも長くなっています。
外食産業企業調査結果によれば、近年は労働時間短縮の傾向が見られ、約60%の企業が4〜5年前と比べて労働時間が短くなったと回答しています。とくに「食堂、レストラン」では63.8%が短縮したと回答。しかし、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」など夜間営業が中心の業態では「変わらない」との回答が50%と高く、業態による差も存在します。
有給休暇の取得率が低い
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、全業種の平均有給休暇取得率は62.1%です。中でも「宿泊業、飲食サービス業」の取得率は49.1%と全産業中で最低となっています。これは、従業員の半数以上が有給休暇を消化できていない実態を示しています。
1人あたりの平均付与日数13.6日に対し、実際の取得日数はわずか6.7日しかありません。有給休暇を取得しにくい環境は、従業員の働く意欲に悪影響を及ぼし、さらなる離職を招く悪循環に陥りやすい状況となっています。
離職率が高い・人手不足が深刻
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査」によると、「宿泊業、飲食サービス業」の離職率は26.8%と全産業中でもっとも高く、全産業平均の15.0%を大きく上回っています。この高い離職率は、長時間労働や低賃金、不規則なシフトなど業界特有の労働環境が原因と考えられます。
特徴的なのは、高い離職率にもかかわらず入職率も34.6%と高く、7.8ポイントの入職超過となっていることです。これは新規入職者が常に流入している一方で、定着率が低いという業界の構造的な問題を示しています。
飲食店を辞めないほうがよい場合は?続けるメリットも
飲食業界は厳しい労働環境を持つ一方で、特定の状況や個人の志向によっては継続する価値がある職場です。以下5つのケースでは、飲食店での就業を続けることで得られるメリットが、業界特有の課題を上回る可能性があります。
● 入社してすぐの時期:短期離職のリスク
● 将来飲食業で独立や起業を目指している
● 「食」に強いこだわり・情熱がある
● 人と接することが好きでやりがいを感じる
● スキルを磨けばキャリアアップできる可能性も
詳しく解説します。
入社してすぐの時期:短期離職のリスク
飲食店で働き始めて間もない時期に「きつい」と感じて辞めてしまうと、短期離職の印象が残り、今後のキャリアに不利になる場合があります。とくに転職活動で短期離職を繰り返していると、採用担当者から「飽きっぽい」「粘り強さに欠ける」と判断されやすくなります。
入社してすぐの業務は覚えることが多く、忙しさに追われがちですが、慣れてくると効率的に仕事がこなせるようになるケースも珍しくありません。可能であれば最低でも数ヶ月は続けてみて、職場の雰囲気や自分の適性を見極めることが重要です。
将来飲食業で独立や起業を目指している
飲食店で得られる接客や調理技術、売上管理などの知識は、将来独立を考えている方にとっては貴重な経験となります。実践を通じて店舗運営のノウハウを学べるため、自分で開業するときのリスクや課題も具体的に把握しやすいのです。
さらに、食材の仕入れルートやお客様へのサービス向上策などは、実際に店頭で働かないと見えにくい部分でもあります。もちろん、体力面や勤務時間のハードさは大きな負担になりますが、開業後も同様の課題は発生する可能性が高いでしょう。将来的に独立を視野に入れているなら、短期的な苦労を投資と考え、店舗経営のリアルを吸収する時間にあてるのも有用です。
「食」に強いこだわり・情熱がある
料理そのものが好きで、食を通じて喜びを提供したいという強い思いを持っている方にとって、飲食店で働くことは大きなやりがいにつながります。仕込みや調理の一連の過程で、食材の選定や味付けの工夫など、自分のアイデアを生かす機会も多いでしょう。
また、食にまつわる知識が深まれば、メニュー開発やコスト管理などクリエイティブな分野にも挑戦できる可能性があります。専門的な料理の世界では店ごとの技術や伝統が継承されている場合が多く、短期間で辞めてしまうとスキルを十分吸収できずに後悔するかもしれません。
人と接することが好きでやりがいを感じる
飲食業は接客が大きなウエイトを占めるため、人と関わるのが苦にならない方には向いている仕事です。お客様が満足そうに食事をしている姿や「美味しかった」という言葉を直接聞けることは、何よりの喜びといえるでしょう。
また、同じ接客業でも、飲食の場合は提供する料理やサービスによって店舗の個性がはっきりと出るため、自分らしいおもてなしを追求しやすいというメリットもあります。対人関係の得意分野を生かし、多くの人との触れ合いを楽しめる方におすすめです。
スキルを磨けばキャリアアップできる可能性も
飲食業界では調理や接客といった実務スキルが直接成果に結びつくため、経験を積むほど評価される傾向があります。早い段階で副店長や店長としてマネジメントの立場に就くことも不可能ではありません。
スタッフのシフト管理や売上分析、店舗の改善策の立案などさまざまな業務を任されるようになると、転職活動の際にも有利に働く可能性が高いでしょう。さらに、多店舗展開を行う企業ではエリアマネージャーや本部スタッフへの昇格も用意されていることが多く、スキル次第でキャリアアップの道を切り開ける業界ともいえます。
飲食業界でキャリアを積むか転職か?迷ったときのチェックリスト
飲食業界での経験を生かすか、新しい世界へ飛び込むか迷っている方も多いでしょう。以下3つを考えることで、最適な道を見つけやすくなります。
● 「続ける場合」と「辞める場合」のメリット・デメリット
● 自分に合う働き方を選ぶための自己分析
● 飲食専門の転職支援サービスを活用してみる
比較検討し、後悔のない選択を目指しましょう。
「続ける場合」と「辞める場合」のメリット・デメリット
飲食業界を続ける場合のメリットは、経験の積み重ねがあります。同じ職場で働き続けるほど調理や接客などの実務スキルが高まり、責任のあるポジションを任される機会が増えるでしょう。一方で、長時間労働や休日の少なさといった業界特有の負担に対するストレスは否定できません。
辞める場合は、他業界での新たな挑戦や労働環境の改善を期待できますが、ゼロから知識や経験を積む必要があります。飲食業界で身に付けたコミュニケーション能力や、段取り力を生かせるかどうかも、職種選びのカギになるでしょう。
自分に合う働き方を選ぶための自己分析
後悔のない決断をするためには、まず自分の価値観や性格、得意分野を把握することが重要です。たとえば「人と話すのが好き」など強みを再確認することで、飲食業界が向いているのか、他業種でも活躍できるのかを判断しやすくなります。
反対に、長時間労働やシフト制がどうしても合わないと感じるのであれば、労働環境の整った職場への転職を視野に入れるのも1つの方法です。自己分析を行うことで、思考にブレが生じにくくなり、周囲の情報や意見に左右されずに自分に合った道を選べるようになるでしょう。
飲食専門の転職支援サービスを活用してみる
飲食業界には、業界特化型の転職支援サービスやエージェントが存在します。こうしたサービスを活用すると、自分の希望条件に合った求人情報を効率よく探せるだけでなく、履歴書の書き方や面接対策などのサポートも受けられる点が大きな魅力です。
また、飲食業界に詳しいエージェントであれば、企業の内部情報や現場の雰囲気など、一般の求人サイトでは得られにくい情報を持っている場合も多いでしょう。どのような職場なら自分のスキルを生かしやすいか、迷っている方には心強い存在です。飲食業界の経験を評価してくれる企業を見つけやすくなるだけでなく、キャリアアップの選択肢を広げるきっかけにもなるはずです。
「飲食はやめとけ」といわれても自分に合った道を選ぼう
最終的に飲食業界を続けるか辞めるかは、それぞれの価値観や目標によって大きく変わります。自分に合った働き方を見極めるためには、現職の課題や学べる要素、将来的な可能性を客観的に整理することが大切です。
スキルを磨いてキャリアアップを目指すのか、労働環境を重視して転職を考えるのかなど、ライフスタイルや将来設計を基に検討すれば、後悔の少ない道を選びやすくなるでしょう。今回紹介したポイントを踏まえて、自分なりの答えを導き出し、納得のいく決断をしてください。
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itkは2006年の創業時より、人材紹介サービスを通じて、外食産業の地位向上を企業理念に掲げるとともに、『日本一の外食産業の人材サービス企業になる』ことを目標にしています。
私たちの行動や成長が、外食産業を元気にし、外食産業の地位向上の一助になれればと日々研鑽し、それがお客様の賞賛になるよう努力し続けてまいります。